2012年3月11日日曜日

ヴェネチアビエンナーレと現代美術の苦悩

先日帰国してさっき机の資料を整理しようとして取りだした文化資源学の中でヴェネチアビエンナーレの企画責任者の笠原美智子さん(当時東京都写真美術館事業企画課長)がでてきて、おもしろかったので一部ここに記載。

ヴェネチアビエンナーレヴェネチアビエンナーレは、自分は行ったことないんだけど現代アートの祭典。

で、公園内に各国が展示館を半永久的に持ち、2年に一度行われる世界最大規模・歴史的(1895年から)の祭典なわけだが、日本館もそこに存在している。
しかし、この日本館、1954年に現在のヴェネチアビエンナーレ日本館の建設に際して外務省に55年度予算として建設費千数百万円を要求したが、最終的にこの要求は除去され、9月に三百万円の資金のみが提供。結局そんなのでは建設できるわけもなく、当時ブリヂストン会長が建築費を負担することでやっと日本館が建てられたそうな。現代アートに対する厳しさが見て取れる。

展覧会にしても、2006年度においての予算は 国際交流基金の3000万と協賛金で集めた710万。
これで 下見の旅費、輸送費、設営展示費、広報、図録作成、パンフレット、パーティ資金、光熱費、監視など全てを行わないといけないらしい。このため、 印刷物は船便で事前に送り、パーティのお酒は提供をしてもらうことでなんとかまかなったとか。
絵画作品に保険をかけるとなるとまたそれもとんでもなくお金がかかるはず。3000万というのは相当厳しいのだろう。
実際にコラムでは欧米諸国は最低3-10倍は予算を組んでいるだろうとのこと。

自分がいたフランスは毎年文化予算に国家予算の1%を捻出し続けているし、ポンピドゥーという立派な近代美術館も用意されている。おまけに都市開発の際もアートの目線は必ず用意されているらしく、かのラデファンスができる時(60年代)でも広場に置く現代アート作品としてフランスで活躍するフランス人および外国人の中で幾人かにアートを依頼した。作品群はデファンスに行けば一目瞭然。

現代でもパリではLa nuit blancheという10月1日の夜は現代アートが街中の到る所で展示される。当日はものすごい人出で、アーティストにとっては自分の作品をアピールする凄いチャンスになるだろう。この日はメトロもずっと動いているし、アーティストさんと話したところ、自分で設営と撤収を行わないといけない代わりにお金は特にかからないっぽかった。出資提供はパリ市。

現代アートにもお金を費やし、将来歴史的価値をもつであろうアート作品の保持及び、アーティストの養成できる環境を作る欧米諸国。フランスは、特に印象派の絵の海外流出を悔やんでいるらしく、その二の舞は踏まない!との決意をしているとか。

同じく浮世絵が流出してしまっている日本は果たしてどうなのかっていうと、平成館の特別展とかみてても 以下に苦しいながら補助金と入場料収入でなんとかやるかみたいな苦悩が表れているし、現代アートに特別フォローがいっているわけではないんだろう。実際、王族にフォローしてもらって中東で大々的に展示をしている村上隆とかを見ていると、このコラムだけでなく差は歴然なんだろうなぁと思う。

どこかで果たして転換点はくるのだろうか。