2012年11月30日金曜日

農家日誌④ 食える、のか

僕が働いていた農家はいわゆる専業農家だった。

一度、率直に聞いてみたことがある。

~農園では農業だけで食べていけるんですか?と


答えは、うちはやれてる。

だった。

これはある意味正解で、ある意味不正解なのではないかと思う。

農園は主を引いたお父さんとお母さん、雇い主とその奥さんと娘さん、おばあさん、の6人である。

北軽井沢は高原のため冬が早い。勝負は5~11月であって、11月末には霜が降りてしまいそのあとは野菜が栽培できないそうだ。

お父さんの世代では冬に出稼ぎにいったそうである。林業やスキー場、色んな事をしていたという話をお酒を飲みながら教えてくれたことが会った。

今は畑が使えなくなった後、最後の後片付け(ビニールはがしたり、土をならしたりだと思われる)をして、たまった事務処理をして2月からまた土を起こして、種まき(恐らくハウスで)をして、と作業が始まる。その間の2カ月はオフになり、雇い主も基本的にやらないといけない仕事はない。もっとも勉強や情報収集を行ったりとやることはあるみたいだが。

その意味では野菜を売った収入だけで家族全体を養えているし、スタッフに給料も出せてはいる。

一方、僕が働いていたバイトによる短期の他に、長期で働いているスタッフもいる。スタッフはシーズンオンである5~11月はフル稼働(週6)で働き、その間は住み込み食事つきで給料が出る。僕等のようなバイトよりも給料は大分上がるらしい。仲介を通さないのでその分のマージンもないし。

しかし、彼等もオフシーズンは仕事ができない。冬場仕事がない時期に遊ばせておく余裕はないのだ。従って、オフは各自が自力で行きぬかないといけない。冬場は実家に戻る人、旅館で住み込みで働く人、色々と選択肢があるようだった。それに、基本的には契約は単年度らしい。
貯金はできるかもしれないし、ああいった生き方も勿論ひとつの生き方だと思う。都会ではもう暮らせないという人もいた。
けれど、ああいう雇用形態では福利厚生も厳しいし、安定した仕事にはなかなかなれない。結婚して子供が産まれてその先どうするのか。実はスタッフの一人は結婚してまさに子供が生まれていたがはたして来年以降もずっと続けて行くのだろうか。

長期的に通年で雇用、という形は今ではきっとできないのだろう。
準レギュラー的な彼等を真の意味で食わせられる、と問うならば答えはNOなのではないだろうか。


通年でスタッフを雇おうとすると冬場に加工をして販売を、、というスタイルをとらないといけないらしい。しかし、その分の投資、人件費、安定して冬場も収穫、その部分でのリスク、といった部分をああいった寒冷地の有機農業でやるのはかなり厳しいという話をしていた。
あのあたりでは比較的大きな農園16haであるが、その体力である。他の農家でも基本的に通年雇用というのは難しいのであろう。

若者に就農を!というキャンペーンも出ているが、雇用先での安定保証がない実態(基本的に農家は零細なわけで、農業法人の力はまだ強くないはず)でこうしたキャンペーンを掲げてもまだまだ、”食える”世界にはなかなかならないのではないだろうか。