2011年1月14日金曜日

アラブ学のススメ3

@スークで買い物をする

スークは市場。買い物をする場所である。
いざ、買い物をしてみよう。
あ、これ欲しいな―。
そう思って値段を見ると値札はない。
そう、スークのものは交渉制のモノが多い。勿論値段が決まっているものもある(例えばジューススタンドとかパンとかそういうのは定額)んだろうけど、観光客が買うようなものは交渉するものが多い。

この国では人間同士の話合いが避けられない。前回も述べたが人と人との交流はこの国々の基本なのだ。

つーわけで、彼等はふっかけてくる。正規の値段の3倍とかはザラ。そもそも正規の値段なんか知る由もないのだが、日本とかヨーロッパみたいに言われ値で買ったら後で店のおっさんにほくそ笑まれるだけだ。
こういうところは日本人は苦手なのかもしれないが、値切ってなんぼ。それを見越して彼等もふっかけてくる。大阪のおばちゃんみたいにならないとやっていけない。
初めのうちは、なかなか難しい。値段の相場がわからないからどれぐらい値切っていいかもわからない。
最初の方は結構高い値で買い物をしてしまったように思う。

欲しいものを見つけて、これ、幾らですか?という僕の質問に対して、”幾らがいいんだ?”と聞き返される。ここで相場がわからないともう勝敗は喫したも同然である。相手が上手であった。


@スークでの交渉ゲーム

さて、この交渉、慣れてくると非常に面白い。

”どこまで値下げできるか” はもはやゲームみたいなものだ。
値段のおとし所を見極めて、交渉でどこまで優位に立てるか。
これ、欲しい!って顔を出したらもう負けである。向こうが強気になるし、何より欲しい気持ちが前面にでると、自分の中の限度額がどんどんつり上がってしまう。だから結果的に負ける。
以下になんとかその気持ちを読ませずに安い値段で買えるか。

途中からこの交渉ゲームにすっかりはまってしまった。

どんなものかその一例を紹介してみよう。


店の前で声をかけられる。
ふらっと店の中に入ってちょっと興味深いものを手にとって何食わぬ顔をしていれば勝手に向こうがセールスアピールをしてくる。
ふーん、これいくら?と興味なさげにしょうがなく聞いてあげると値段が提示される。
うん、高い。いらないっす。と即座に品物を置いて踵を返そうとしよう。

この時点でまてまて!いくらならいいんだ!という答えか、幾らにするぞ!という答えが返ってくる。

さらに、一瞬立ち止まってそのまま歩こうとするともう一声!いくらにするぞ!という声が聞こえてくる。

ここで、しょうがなさそうに振り返ってみよう。

この時点で言い値の半額とか30%引きとかになることが多い。(モノによるが)

ここまできたらようやく勝負スタートである。
後は自分の中で心に決めた限度額を軸に少しずつ値段を上げて行く。

相手もここであれこれ言ってくる。

これがFinal priceだ!とかこれもつけるから幾らだ!とか色々。
だから、こっちもあの手この手で応戦する。
-じゃあいらない。
-肩をすくめて残念そうな顔をする。
-こっちから抱き合わせで買うから安くしてよと提示する。

そんな応戦をしあい、最後折り合いがついた時は笑顔で握手する。
これで、商談成立である。
駄目だったら、ダメだで商談失敗。

ちなみに盟友曰く、どうも僕は肩をすくめてもうちょっとなんないの?という残念な顔をすると相手にすごい効果的らしい。

そうこうするうち、相手が苦笑いしつつもこっちの条件を飲んで売ってくれる姿を見るのが快感になってきた。勝負に勝った感がすごいするから。

@エピソード・シリア

そんな商談を楽しんで10ヶ月後。 シリアにて再び商談のチャンスが。
今回はスークも何度も行った後だったし、特に目新しいものもなく、ふらふらしてたのだが余りに暇だったので途中声をかけてきた石鹸売りの兄ちゃんと商談をすることに。100SPで売る石鹸をまずは60SPで購入。
その後、この地域ではどうやら布が有名らしく、割とおしゃれなストールを売ってくるおじさんが声をかけてきた。
相場がよくわからないが、600SPという。
いやいや、そりゃ高いだろ。しかも買う気が全然ないので100SPでどうだ?とふっかける。
交渉開始。


”お前さん、バカ言っちゃいかん。コーヒー飲むのとは違うんだぞ?”
”あ、じゃー、いいっす。さよならー”
と、まぁ実際買う気もないのだがとりあえずお決まりのパターンを実行。
”まて!400、いや300にするから!”
 ここで振り向いて、
”いやだから100。”というと
”いいか、じゃあお前にはシークレットプライスで250で売ってやる!特別だ!”
との答えが。それでも100で粘っていたらとうとう150SPにまで下がってきた。
自分は一切譲っていない。
これはいける!と思って、
”いやでも100が。。。”といったら

”YOU CRAZY!!!”と言われて追い払われてしまった。

相手に切れられるとは。どうやら本気で赤字になる価格まで突っ込んでしまったようだ。というわけで120くらいが仕入れ額なのだろう。

そのちょっと後でストール好きの同行者と話しているとシルクのストール150なら全然安いよ!と言われたので買い直そうとしたのだがもう警戒して目も合わせてくれなかった。

ここでようやくストールが欲しくなってきた自分。

少し先のところで同じような店を発見し、何気なく手に取ってみるとご丁寧に解説が。

”これはアレッポのシルクの布だぜ!こうして燃やしてみればナイロンとシルクの違いがわかるだろ?”
といって、シルク布とナイロン布の端切れをちょっと燃やして実演してくれた。なるほど、確かに肌触りがいい。
へー、これ幾ら?と聞くと
1000SPとの答えが。
”はっはっはー、さっきの店で250で売ってくれるって言ってたぜ。ありえんよ。さよなら―。”
とふっかけるにもふっかけすぎなのでさっさと帰ろうとすると600,400,300とぐんぐん下がる。
そのまま歩こうとしたらなんと目の前にいるおじさんが
”250だ!おい250にしてやれ!”と言うではないか。
このおっさんは誰やねん。ていうかなんで部外者のお前が協力して値下げをする?と混乱しているとおっさんがいつの間にかさっきの店に戻って品物を入れて戻ってくるではないか。
なるほど、暇だから息子たちに店を任して自分は別の店の親父と談笑していたっぽい。
誰も買うなんて言ってないよ。

と言ったら200まで下がった。
結局、この後一度そのまま歩いて行ってしまったのだが、同行者がこれは全然安いよーというので、踵を返して結局200で購入。
購入したシルクのストール。なかなか暖かいし結構気に入っている。

1000SPが200SPになった。しかも商談の楽しみつきである。

ちなみに1SP=2円。だから、元値もそんな高くないのだ。でも、こっちの国と日本じゃ金銭感覚が違う。郷に入っては郷に従ったほうが面白い。

結局、2000円の言い値のシルクのストールが400円で買えた。

シリアでまた少し商談に自信がついた。

まぁ、これですら僕が手のひらで踊らされていて、あいつ200SPで買って言ったぜ!いい商売だ!

と言われていることも十分あるのだが。
それでも、商談をして折り合いがついた時は、自分がこの値段だったら払ってもいいと納得したと言うこと。

きっと、お互いに満足しているのだから、それでいいのだろう。

需要と供給側がお互いに効用最大になるようにするんだから、経済学の原理をまさに実践しているようなもんなのかな。


日本やヨーロッパの日常とはかけ離れた、時に死ぬほどめんどくさい交渉。毎日の買い物でこれするのかーって思うと疲れちゃうけど、たまにすると面白い。 


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