2011年1月21日金曜日

アラブ学のススメ4

とりあえず、一連のアラブ学のススメシリーズも今回で終わりです。


最後は、僕なりに感じた各国の魅力をちょこちょこ紹介しようかなと。


①レバノン
レバノンは中東のパリと言われるらしい。この国にいる間はずっと現地の友達が案内してくれたので地元の人との交流は彼らの家族とくらいしかなかったし、街中も歩き回ったりしたのは一部に限られるので、印象が限定されるのはあるけど、地中海沿いらしく、綺麗な海がいつも見える素敵なところ。


ベイルートは内戦の後を一刻も早く消したい(当たり前だ)思いもあって、今は非常に綺麗な街だ。


中心街には最新の綺麗なショッピングモールが広がり、中央広場もとても華やか。スークもアラブアラブしていないし、落ち着いている。街の人はみなアラビア語意外に英語かフランス語が最低限話せる。アラブの雰囲気を感じられるし言葉も通じる。
多分、ヨーロッパの雰囲気を最も持っている国なので、色々と馴染みやすい。 
そして、アラビア料理はレバノンから始まった。だから、食もおいしい。
まぁ、僕はそれで見事に食あたりになってバールベックに行けなかったわけだけど、それは食べ物がうまいから普通に食ってただけで、たまたま運悪く何かに当たっただけだろう。飯は独特な香りとかあるけど普通にうまい。

歴史も抜群である。アルファベット始まりました☆みたいな国なので古代ローマ時代の列柱とか平気で沢山ある。イタリアで色々とローマ時代の遺跡もみたが、こっちの方が色々綺麗に残ってるような気がする。



その上、山ではスキーもできるので、海で泳いで、車で1時間も上に上がればスキーもできてしまうらしい。この観光資源がレバノンの魅力であろう。
ただ、個人的に、この国が面白いのは、海岸線沿いに都市が発展しているのにそこには平野部がないとこなんではないかと思う。普通は、海があって、平地がちょっとあって、そして山が奥にある、或いはずっと平野とかだと思うんだ。日本は割と急峻で、すぐ山があるって言ってたけどそれでも小さな平地があるところが多い。けど、この国はそれが本当に猫の額くらいしかない。

だから、海岸線と、その先には山の傾斜と山の中腹にまで広がる家々が見えるのだ。これは、初めて見る経験だった。
そう、そしてこの構造が何をもたらすかと言うと…




これである。
そう、レバノンは夜景がものすごく綺麗な街だ。星空みたいに明かりが広がっていて、それが山の中腹まで広がっている。


ただ、この夜景を作りだす大きな原因がある。それが交通渋滞である。


この国には公共交通がない。信じられないかもしれないが、国の動脈は海岸線沿いを走る高速道路と、その横に併設される海岸通りであり、電車は通っていないのだ。かつては通っていたという話もあったが、すたれてしまって今はない。
そうなると、移動手段は当然車になる。だから、朝と夜、通勤時に合わせて恐ろしいまでの交通渋滞がベイルート付近で起こる。これはもう20年も続いている現象らしい。
道路を増やせばいいではないか。これも当然考えるのだが、先に行った通りこの国には平野部が殆どない。だからもう場所がないのだ。そんなものを通す。これ以上道路を作ろうとすると恐らく沿線部の店が無くなって街が成り立たなくなる。かといって山道を通すとものすごい遠回りになるからきっと成り立たない。
もうひとつ。こんな夜景の綺麗な国なのだが、その電気は24時間国から供給されるわけではない。彼等には定常的な電気供給がない。だから、一日12時間しか電気がもらえない。その後は地域ごとのジェネレーターで回している。
信じられるか?そんなこと。電気なんて通って当たり前の自分からしてみたらこれは本当に衝撃だった。突然電気がふっと消えて一分くらい切り替えに時間がかかるのだから…。
そんなわけで土木・都市計画的にも非常に興味深い国である。

もうひとつ、この国を語る上でイスラエルは不可欠なのだが、それはアラブ学の”ススメ”ではないので今回は割愛。

②シリア
シリアはアラブアラブ―な国である。


アラブが基礎のアラビア数字なのに、なんとアラビア文字だとその字形は全く異なる。だから最初は数字も読めない。アラビア語は当然話せない。

でも、シリア人は英語もフランス語も喋れない。Oh my god....
というわけで数字の読み方と発音は速攻で覚えた。
まぁ、こういう時の形も違うし何言ってるかさっぱりわっかんねー。という時はどうするか?
そう、世界共通言語のエスペry・・・・・なんか通じるわけないので、世界共通のジェスチャーでなんとかやりくりする。 ちなみに、ギリシャも割とこんな感じだった。だから魔法の様な言葉をちょっと覚えた。
閑話休題。
シリアも歴史ばんざーいという国である。だって、旧約聖書に出てくる通りがダマスクスにそのままあるんだよ?旧約聖書ておい、お前ちょっとまて!という話だ。
ダマスクスは巨大な街。どこまでも広がっていくのではないかという風に感じられる。
シリアで印象的だったのはマルムーサという砂漠の中にある修道院とパルミラ遺跡である。
マルムーサ修道院は本当に、砂漠の中の山間にぽつんとはまったような場所で、周りにはなにもない場所。それだけに、夜景と、朝日と、星空はとても綺麗だった。
朝日

修道院の裏手
 パルミラ遺跡はシルクロードの一部で2世紀ごろにローマ帝国に併合されたとかだった。このパルミラ遺跡、歩いて回ると3時間くらいかかるのでは?というくらいでかい。つーか、そんくらい歩いていた。




2km×3kmほどに渡って非常に高いレベルで遺跡が保存されている。列柱の並びが本当に美しくて、夕焼けの景色は感動的だった。

後は、クラックデシュバリエという城マニアには涎モノではなかろうかというめちゃくちゃカッコいい城がある。あぁ、戦争で落とされないための城ってのはこういうものが必要なのかと。装飾は一切ない、機能美で固められたその空間に僕と友達はカッコよすぎる…とため息ものだった。

まぁ観光資源は沢山あるのだが、それはこれくらいにしておこう。
もうひとつ、シリアは最も人々が暖かい国である。困っていたら助けてくれるし、道を通り過ぎる人達は本当に快く、一切の下心無し(モノを売りつけたいとかじゃなく)に純粋に僕らのことを歓迎してくれる。あんな素敵な笑顔で人を迎え入れてくれるなんてなんて暖かい人達なんだろう。
アメリカの”テロ支援国家” というイメージからは随分かけ離れている、とても平和な国だ。

街は発展途上で車だらけでちょっと土臭い感じはあるけど、人と人との交流という意味ではなんだかハッとさせられる国。

③モロッコ
モロッコは最も長くいたのでちょっと上2つと比べると印象も違うのだが、この国がもっとも面白いのは旧市街である。
モロッコはフランスに統治されていたのだが、旧市街があまりに複雑で迷路のような構造だったので、それはそのまま残して、隣に新市街を作った。だから、旧市街は10世紀前後からそのまま残っているままである。


マラケシュ、フェズという代表的な都市の構造はまさに迷路で、フェズで僕等は見事に迷子になってダンジョンから出られなくなった(マジで)。地図を持っていても全ての道が曲がりくねりながら、しかも目印も何もないので方向感覚なんて一瞬で消える。


フェズ旧市街を上から眺める。

そんなこの街の旧市街のスークは観光客も地元の人も、猫も、馬も、バイクも同じ道を通るというなんともカオティックだけどとても熱気的な街だ。東南アジアとは違った熱気があって歩いているだけで面白い。
海沿いの街も、砂漠も、山間の街も沢山回ったけど、モロッコの魅力は旧市街に凝縮されている。
スークの魅力を最も感じたい人にはモロッコが面白いのではと思う。

おまけ②砂漠
ちなみに、砂漠は感動!という一気に押し寄せてくるものではなく、なんだか後からじわじわと迫ってくる感覚を与えてくれる。僕が砂漠に泊った日は満月だった。だから、星はほとんど見えなかった。代わりに、ずっと遠くまで砂の山や、砂の広がりが月明かりに照らされて見えるのだ。砂の山に登って見渡す景色は風の音と自分の呼吸音しか聞こえない。こんな孤独な世界にサンテクジュペリは落ち、アラブの行商人たちは何もない中を進んで行ったのかと。
ただ暗闇と砂が広がる砂漠の景色

月明かり







④アラブという国々


アラブの世界は言ったことない国もまだまだ沢山あるけど、やはり、人が暖かい。そして、とにかく時間がゆっくりと流れている。
フェズでカメラを向けたらポーズを決めてくれた子供たち
特にモロッコとシリアで感じた僕の印象は、彼等は今という時間を存分に楽しんでいるということ。
レバノンはすごい勢いで発展しているけど、でも根幹部分は変わっていないように思えた。
ゆっくりと成長はしているものの、彼等は東南アジアのように発展したい!先進国に追いつきたい!といったあの独特の熱気はあまり感じられない。その一方で、このままこの生活を続けても、幸せならそれいいじゃないか。そんな気持ちが感じられる。

いかにも!な肉屋。ここのサンドイッチはたまらなく好きだった



ゆったりティーを飲んでシーシャを吸って、友と語らい、スークの喧騒の中、今を楽しむ。
これがずっと続いてきて、これからもずっと続くんじゃないかと思わせてくれる国々がアラブだった。

僕らが猛スピードで駆け抜けていつの間にか忘れてしまったモノがこの国々には到る所に広がっている気がする。
始めのモロッコがこれだったから、僕は改めてアラブにはまったのだと思う。


ヨーロッパを回るのは勿論面白い。けれど、それとはまったく違ったアラブ文化にも足を延ばして見て欲しい。
そして、ゆっくりとティーを飲みながら、10年後に訪れても変わらずの世界が広がっているのだろうかと思いを巡らせるのもいいのではないかと思う。


まぁ、ざっとこんな感じか。
語ればまだまだ幾らでもでてくるのだけど、尽きることはないのでここら辺で終わりにしよう。

物理的距離以上に心理的距離の遠いアラブ諸国に魅力を少しでも感じてくれたなら幸いで、もしもこれに触発されて、僕みたいに卒業旅行でモロッコ行ってみました!みたいな人が増えたらそれはもうしてやったりである(笑)

2 件のコメント:

  1. 良く見たら(良く見なくても)写真がすごいきれいだわ。シリアすごい。

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  2. 流石石野、ちなみにシリアの写真は俺のデジカメが壊れて友達が取ってくれた奴を使わせてもらっています…

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